第11章 本当の気持ち
写真部の活動を終え、私と徹は例のカフェに向かった。
一旦お店の前で立ち止まり、最後の打ち合わせをする。
「いい?まずは頭を下げて謝罪よ。何を言われても逆ギレしたりしないでね。」
「流石に俺だってそんなことしねぇよ。」
「絶対だよ?じゃあ、ドア開けるからね。」
勇気を振り絞ってドアを開けた。
マスターはいつもと変わらずカウンターでコップを拭いていた。
私達はマスターの正面に立ち、頭を下げた。
「すみませんでした!!」
私達が声を揃えてそう言うと、マスターは陽気に笑った。
「久しぶりだねぇ。徹君、シュリちゃん。」
私達が恐る恐る顔を上げると、マスターは不思議そうな顔をした。
「どうしたんだい?」
「あ、いや…バイト、せっかく採用して頂いたのに私達あの後ご連絡もせずに…2週間以上も経ってしまって…。」
「とりあえず謝りに行こうと思って二人で来たんですけど…。」
マスターは私達に座るように促した。
ついでに飲み物まで出して頂き、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
「二人はまだ、働いてくれる気持ちはあるのかい?」
「え…?はい、マスターが良ければ私はもちろん…!」
「俺も、ここで働かせてほしいです。」
するとマスターは笑顔で頷いた。
「じゃあ、ぜひ働いてもらおうかな。」
「いいんですか?」
「2週間以上も経ったのに律儀に謝りに来てくれる若者なんて今時なかなかいないからね。やっぱり私は君達にここで働いてほしいよ。」
「ありがとうございます!勇気出して来て良かったね徹!」
「そうだな。本当にありがとうございます、マスター。」
「いいんだよ。もうすぐ大学祭だよね?働くのはそれが終わってからでいいからね。」
この人はどこまで良い人なのだろう。
許してもらえる上に、働かせてもらえるなど考えもしなかった。
マスターにお礼を告げ、二人でカフェを出た。