第1章 誕生日の彼
影山side
《飛雄くんへ
きっと口ではうまく伝えられないから手紙にも書くね
今日、18時に私の家に来てください
あなたの誕生日を私に祝わせてください
待ってます
》
綺麗な文字で書き綴られた手紙は、全部俺の為の物だった
……クソっ!
さんにこんなに思われてるなんて、思ってなかった
なのに、俺は…
勝手に決め付けてあの人に怒鳴ってしまった
疑ってしまった
手紙を読み終わってから、後悔ばかりが込み上げてきた
午後の授業は全く集中出来なかった
どうやって謝ろうとか、嫌われたらどうしようとか
細かいことを悩んでいたら終わってしまっていた
放課後、俺は荷物をまとめて、さんの教室に走っていった
影山
「さん!」
その途中の廊下にいた
「飛雄くん‼︎どうして…」
影山
「あ、えっと……」
謝りたいのに、言葉が出てこない
影山
「あの、……その。」
俺が何も言えずにいると、さんが笑った
「うん、わかった。一緒に帰りながら話そ。」
さんは俺の手を引いて歩き出した
「飛雄くん、ごめんね。私が慣れてないから…」
影山
「いや、さんは何もっ‼︎」
悪くない、ごめん
その一言が言えない
「本当のこと言うとね、私、結構焦ってたんだ。」
影山
「え?」
焦る?さんが?
全然そうは見えない
さんはいつも冷静で、余裕そうな顔してたのに?
「私、誰とも付き合ったことなかったから。私、どうしていいのかわからなくて…。好きだけど迷惑かな?って思ってた。」
影山
「そんな、迷惑なんて‼︎俺の方こそ、怒鳴ったりしてすみませんでした‼︎」