第4章 〜華奢〜
隊主室に着くなり、玲は長椅子に倒れこんだ。
「っおい!どうした?!」
ひやりとして駆け寄ると、気怠げに目を開いた玲が疲れた、と零した。
「霊力を消耗したのか?」
そう問えば、綺麗な顔が苦笑に変わる。
「まさか…。砕蜂の霊圧に合わせて反鬼相殺なんて続けてやったからかな。脳の神経焼き切れそう」
「…つまり?」
「…やっぱり制御装置造る」
結局ちゃんと説明しないまま、眠りに落ちた玲に、小さく溜息を吐く。
言いたくないが、恐らく自分よりもずっと脆弱な存在に合わせて力を制御するのが思うよりも疲れるのだろう。
霊圧が上がった今なら分かる。
今の状態で、平隊員なんかと戦えば、加減することに疲れる自信がある。
反鬼相殺なんて以ての外だ。
あれは相手の術と同質同量、逆回転の術をぶつけて相殺する高等技術。
仮に今俺が平隊員の鬼道を連続で相殺なんてすれば。
制御ミスして殺してしまう未来しか浮かばない。
…霊圧制御、もうちょっとやった方がいいか。
軽く自己嫌悪に陥って溜息を吐き、羽織を玲に掛けてから、執務机に向かう。
松本はまだ戻っていない。
招集された副隊長達は追って総隊長に説明でも受けているのだろう。
長椅子で眠る彼女のお陰で、机には当日分の書類しか置かれていない。
何でも出来てしまうのも考えものだな、と綺麗な寝顔に視線を向けて思う。
もしも出来ないことがあったなら、彼女はもう少し人を頼っただろうか。
あんな無茶な事を、笑ってやってしまうような性格には、ならなかったのだろうか。