第3章 〜特別〜
「…あ。虚」
「え?」
「なんだと?」
ばっと反応した冬獅郎を見て、私は出現区域を検索する。
「場所は…西流魂街第一地区、潤林安」
その瞬間、冬獅郎の顔色が変わる。
「隊長!地獄蝶はまだ来ていません!」
「分かってる!玲、まだ出てきてねぇんだな?」
その声に、私は再度虚の動きを探知する。
「うん、多分…約十分後」
「俺なら間に合うな」
霊圧が上がった冬獅郎は瞬歩も速くなっている。
今すぐ出ればぎりぎり間に合うだろう。
他の死神じゃ、倍は時間が掛かる。
「私も行くよ」
「わかった。松本、此処に居ろ。地獄蝶が来たら、先に向かったと伝えてくれ」
「…分かりました」
流魂街では斬魄刀の携帯は禁じられていない。
だからか、あっさり引き下がった乱菊にお礼を言って、私と冬獅郎は瞬歩で駆け出した。
取り残された乱菊が、
「嘘。隊長あんなに速かったっけ…?」
そんな疑問を抱いている事には気付かないまま。