第2章 〜天賦〜
「てめぇは…「冬獅郎。書類なら後で手伝ってあげるから。ね?」
彼が本気でキレる前に、助け舟を出すと、大きな溜息が聞こえた。
「…疲れる」
「大変だね。おいで」
乱菊は奥の部屋でお茶の準備をしているため、此処には居ない。
長椅子に座り込んだ冬獅郎の頭を労わるように撫でると、ピリピリしていた空気が和らいだ。
「お前…簡単に男に触れるなよ…」
そんな事をぼやきながら、拒絶はしない冬獅郎に、首を傾げる。
「触れたら、何かあるの?」
「…襲われても文句言えねぇぞ」
「私に勝てる死神いるかなぁ?」
「そっちじゃねぇよ…いや、まぁ返り討ちに出来るんなら、そこまで心配する程でもねぇか…」
「…うん?そうだね?」
よく分からないと顔に出ていたのだろうか。
冬獅郎は暖かさと呆れを孕んだ眼差しで此方を見つめた。
「お前のそばは酷く心地が良い」
「私は冬獅郎といると楽しいよ」
微笑んで、そう告げると、彼は何処と無くホッとしたような表情になった。