第12章 〜化身〜
「何か雰囲気変わったな」
見た目は変わらない。
表情も反応も変わらない。
変わったのは彼女の内面。
溢れ出す力の質。
「…あは。私ね、神様だった」
「もう驚いてやらねぇよ」
「え、酷い。自分でもちょっとびっくりしたのに」
そんな風にいつもと同じ調子で掛け合いをする玲の手には、白銀に煌めく刀。
鍔に付いている翼の様な装飾が酷く目を惹く。
「それは?」
「この子は泡沫。現実と夢の境、世界の理を捻じ曲げる力。あ、ちゃんと月読も屈伏させたよ」
危険な発言をした後、ふわりと笑って後ろを振り返る玲。
其処には、長い黒髪に紅い瞳の不機嫌そうな男が居た。
「煩ぇ。力は貸すが、負けは認めねぇぞ」
「そう。泡沫、天照。この子ちょっと創り直そうか」
「待て!今のてめぇが言うと冗談に聞こえねぇ!」
「半分本気だよ?」
「冗談じゃねぇ!ふざけんな!」
騒ぐ玲と月読に、冬獅郎は一つ溜息。
すっと現れた白哉が、黙って玲を抱き締める。
それを、複雑な心境ながらも見守れる様に成ったのは、成長した証だろうか。
こんな苛々する成長は本音を言えば要らないが。
「白哉?」
不思議そうに首を傾げる玲が、彼奴の様子に気付いて。
「ごめんね」
優しく謝る姿を見ていられなくて目を逸らした。
同じ様な感情を、彼奴も感じているのだろうかと、恋敵に僅かに憐憫を覚えながら。