第12章 〜化身〜
別空間で、私は破壊閃から必死に逃げ回っていた。
開始からもうすぐ二日経つというのに、月読に疲労の色は一切感じられず。
乱射される攻撃を避け続けても、霊力が尽きる気配もない。
流石、自分を神と言うだけはあると妙に納得しながら、霊子変換に集中しようとする。
しかし、一撃必殺の攻撃を交わしながらでは、中々霊力が回復しない。
一度受けてみようと、霊子の刀で触れた瞬間、刀が粒子と化して慌てて霊圧で弾いた。
相殺しようと鬼道も打ってはみたけれど、総てを喰らい尽くし、無へ返す破壊の光に太刀打ち出来る鬼道など無く。
縛道すら触れただけで消滅させてしまう破壊の化身に、少しでも効果が有るのは、膨大な霊力を消費する四神隷属の攻撃のみ。
普段なら霊力を九割喰らい、反動で熱が出るような物をずっと打ち続けられるはずも無く。
息の上がる身体で霊力を回復させながら、逃げ続けるしか選択肢はなかった。
「おらおら!もう終いか?ここ半日、逃げてばっかじゃねぇか!あぁ?!」
確かにそうだ。
破壊の神と名乗る彼に勝てる手など思い浮かばない。
総てを破壊され、無に返す力にどうやって太刀打ちすると言うのか。
黒い閃光が腕を掠めて、血が流れる。
他の物なら、一瞬で粒子に返す閃光が、私に与えるのは生傷ばかり。
どうして?
彼は今斬魄刀で。
斬魄刀は本来、死神の魂から生まれるもので。
彼は只の依代だと言うけれど。
もしそうじゃ無いとすれば…彼を生んだのは私で。
—…そっか。どうして、忘れてたんだろ。
記憶が戻ってくると同時。
熱が、引いていく。
力が溢れてくる。
手を翳すと、そこに現れたのは見覚えのある洋書。
けれど、そこに描かれた文字は、古代語で。
「っ!それは、源書<オリジン>?!何でてめぇが!」
「それは、私が所有者だから」
カッと光を帯びた源書が、刀へと姿を変えていく。
総てを支配し、選択し、拒絶する力が、私へ流れ込んでくる。
「行くよ、月読」
「チッ糞が!」
刹那、私の拒絶の力と、焦りを浮かべた月読の総ての霊圧がぶつかった。