第12章 〜化身〜
翌朝。
目を覚ますと、あれ程浮かされていた熱は嘘の様に消えていて。
また、抱き締めてくれている白哉の腕から抜けだそうと試みるも、力の差に敢え無く断念。
中性的な、綺麗な顔立ちをじっと見つめていると、くっと彼の口角が上がった。
「っ!白哉起きて…っんん」
くるりと反転させられたと思ったら、唇を奪われ、舌を絡め取られて息も付くことも封じられ。
何が何だか分からないまま、私は力の入らない手で彼の胸を押した。
私の様子に気付いて口付けを止めた白哉を睨む。
「は…はぁ…馬鹿」
「其方が誘ったのだろう?」
「何の事…?」
「昨夜私に口付けを強請ったであろう。忘れたとは言わせぬ」
記憶を手繰って、そう言えばそんな事を言った気がする。
「忘れて無いけど…昨日してくれたでしょ?何でまた?」
首を傾げると、白哉が小さく溜息を溢す。
その姿が妙に悩ましげで。
心臓がどくりと脈打った。
「口付けならば良いのであろう?」
酷く妖艶な気を放つ彼に、頷く事が躊躇われる。
此処で頷くとなんだか境界が消えて無くなってしまいそうで。
けれど、今更駄目という事も出来ずに。
どうすれば良いのかと悩んでいると、襖の向こうに人の気配。
「白哉様。玲様。朝餉の用意が出来ました」
何時も世話を焼いてくれる使用人の声。
私はそれに飛び付いた。
「はぁい、すぐ行きます!」
元気よく返事を返す私に、白哉は不満気な視線を向ける。
それでも上から退いてくれない彼に少し悪戯心が湧き上がって。
するりと首に手を回し、唇を合わせれば、驚きからか彼に隙が出来る。
その隙を突いてするりと脱出すると、白哉はやられたとでも言う様に、額に手を当てた。
「其方は…何を考えておるのだ」
「まだ怖い、けど…触れてみたい。よく、分かんない」
言葉を返すと、そうかと頷いて彼も立ち上がる。
そうして豪華な朝食をご馳走になって。
少し湯殿を拝借して、身を清めてから、私は隊舎へと向かった。