第2章 〜天賦〜
寝ている間に書き足された情報のお陰で迷う事も無ければ、席官以上の実力を持つ死神の顔と名前も分かっている。
知らない死神は適当に流し、知っている死神には挨拶をしながら、真っ直ぐ十番隊の隊主室へ向かう。
しかし、二番隊の羽織を着た女性が、私が一人でいる事に眉を顰めた。
「あ、おはようございます。砕蜂隊長」
「貴様昨日の隊主会の…瑞稀だったか。一人で何をしている?」
その目は不躾なまでの疑いの色を宿していて。
「えっと、十番隊にお茶を分けてもらおうかと思いまして。六番隊の隊主室に無かったものですから」
私は経緯をきちんと説明した。
変に疑われても困る。
今の私に、彼等を害する気は欠片も無いのだから。
「…使いという訳か。ならば私も同行しよう」
完全に信じたわけじゃ無さそうだけど、此方に向けられる視線は少し柔らかくなった。
「え?隊長ってお忙しいんじゃ…?」
「今日の執務は然程多くなかったからな。大前田に任せている」
本当に大丈夫なんだろうか。
その大前田さんって確か副隊長だったはず。
なんか可哀想だけれど、ここで余り遠慮してまた疑われるのも嫌だ。
この人は、任務や命令を絶対尊守するタイプの人だから。