第11章 〜予兆〜
「ほーら、ちゃんと仕事しないと玲ちゃんに鬼道撃ち込まれても知らないよ〜」
彼の言葉に顔を青くして仕事に取り掛かる隊員達。
私は吹っかけた京楽の後ろに降り立つと、とんと肩に手を掛けた。
「ねぇ京楽春水。私は何時から鬼や化け物の類になったのかしら」
さっと血の気を引かせてぎぎぎと擬音語が付きそうな動きで此方を振り返る京楽。
「あはは、やだなぁ…何の事「瞬閧」いや、玲ちゃん落ち着いて…「私は冷静よ?雷吼炮」」
瞬閧の雷を吸収し、威力が数十倍に膨れ上がった雷のエネルギー弾が、執務室を破壊しつつ京楽を襲う。
「京楽?敵に背後を取られるし、この程度の破道で虫の息。ちょっと気が緩み過ぎなんじゃないかしら」
霊圧だけでは防ぎきれなかったのか、血塗れの京楽に冷たい視線を向ける。
「…いやぁ、だってさぁ…「鍛え直し」はい」
悄然と肩を落とす京楽に、私は虹色の光を向ける。
「今日の戌の上刻。あの場所開けとく。浮竹さんも行くみたいよ?」
「わかったよ。だからそんな冷たい視線向けないでくれないかなぁ〜」
序でに巨大な穴が開き、消し飛んだ書類と執務室も時間回帰させて、私はちらりと視線を彼女に向けた。
「七緒」
「はい」
「京楽が気を抜いたら奇襲して良いわ。アレ使いなさい」
「分かりました」
「えぇ?!七緒ちゃん、了承しないでぇ!」
半泣きの京楽を冷めた視線で突き放す。
「貴方の師匠からの修行命令です。何か問題が?」
「瀞霊廷内だからって気が緩み過ぎてる貴方が悪いのよ。今のままじゃ、暗殺者なんか送り込まれたら即死ね」
「そんなぁ…玲ちゃんの奇襲なんて防げる人いないでしょう」
「なら、試してみよっか。攻撃を防げなかった死神さんは皆今日あの場所に行かせるから」
いつの間にか趣旨が変わっている気がするも、気にしない。
「あぁ、それと。私が鬼道放つのは隊長格にだけだから、心配しなくても大丈夫だよ」
恐怖で身を竦ませている死神達ににっこりと笑って、私は十一番隊に向かうべく、瞬歩でその場から消えた。