第10章 〜流転〜
「お、ルキア。起きたか」
「随分と騒がしい様だが」
目を覚ましたルキアに声を掛けた一護だったが、ともすれば、氷輪丸の創り出す氷よりも冷たい声音にぎぎぎと其方に顔を向ける。
「兄等は此処が何処か、失念している訳ではあるまいな」
いつも以上に機嫌の悪い白哉に、冷や汗を流す一護と恋次。
ルキアは兄の不機嫌な理由を何と無く察し、空を見上げる。
其れとほぼ同時。
空に虹色の光が広がった。
人の心を穏やかにするその光は、瞬く間に建物の破損を修復し、殺気石で出来た懺罪宮までもを元の姿に戻してしまう。
「あれは…」
「この霊圧…」
「玲か」
ぽつりと呟いた白哉に、一護は蒼白になって詰め寄った。
「いやいや、あの光、懺罪宮まで治してたぞ?!殺気石ってのは霊力通さねぇんじゃ無かったのかよ?!」
「彼奴に理屈を求めると、疲れるだけだ」
「どんな順応だよ、それ?!」
思わず突っ込む一護の視界の隅で、金色が煌めいた。
「白哉、お邪魔するね。ルキア、元気になった?」
すとんと庭に降り立った麗人の背から金色の翼が霧散し、明るい声が降りる。
「玲、ルキアに会いに来たのか?」
「え?うん、そう…「嘘でも違うって言っとけ」
玲の返事を遮ったのは、氷の翼で後を追って来た元天才児だった。
「え、何で?」
「拗ねるぞ」
—拗ねる?!誰が?!
一護の心の中は大混乱だった。
隣の恋次も、唖然としている。