第9章 〜修練〜
ほっと息を吐いて、漸くそこに各隊長、副官達が居たのを思い出す。
冷やかされるんだろうと思ったが彼等が向けるのは温かい、安堵の表情だった。
「やっぱり敵わないねぇ」
冷たい空気を霧散させ、あどけない寝顔を見せる玲に、小さく溜息を零す京楽。
「京楽隊長は、鬼道で追い払われてらっしゃいましたしね」
くすくすと、その光景を思い出して笑う卯ノ花。
「俺もそう変わらないんだがな…」
余りにあっさりと触れる事を許される冬獅郎に、浮竹は肩を落としていて。
「玲ちゃんはひっつーかびゃっくんじゃなきゃダメなんだよ!」
恐らく玲を寝かせようと、落ち着かせようと躍起になったのだろう隊長達に、やちるが自慢げに声を上げて。
「何が違うのでしょうね」
不思議そうに首を傾げる七緒と。
憮然と腕を組む狛村。
「起きたら死合に付き合えって言っとけ」
更木までもが何処か安堵の表情を見せていて。
彼等も手を尽くしてくれたのが分かった。
「…すまない、礼を言う」
素直に頭を下げると、ふっと隊長達が笑った。
「一緒に居てあげなよ」
「分かってる」
京楽の言葉に頷いて、俺は自分の名が書かれた部屋に玲を運んだ。
一向に羽織を離さない華奢な手を撫でて。
そのままベッドに横になる。
濡羽色の髪を撫でると、無意識に擦り寄ってくる彼女を抱き締めた。
隊長達にすら触れさせもしなかった玲が、心を許してくれているのを改めて実感して。
未だ残る気怠さに身を任せた。