第1章 〜欠片〜
「日番谷隊長はいらっしゃいますか」
「あぁ」
彼が返事をすると、扉が開かれ、その場で一人の死神が膝をついた。
「瑞稀玲様のお部屋についてご報告でございます」
「…そうか。なんだ?」
「はっ!十番隊若しくは六番隊の隊長の部屋の近くならばどこでも良いとの事で…」
「あぁ分かった。ご苦労だったな」
「勿体無いお言葉。失礼いたします」
再び頭を下げたその死神さんは、言葉と共にすっと消えた。
「あんな人も居るんだね」
「…隊長副隊長の灰汁が強過ぎるだけだ。伝令はあれが普通だ」
そう答える冬獅郎は苦々しい表情をしていた。
「あ、隊長!」
声と共に飛び込んできたのは、橙の髪と瞳のお姉さん。
冬獅郎に松本と呼ばれていた、ここの副隊長だった。
「わぁ…本当に大きくなってる~!シロちゃんが…私の癒しが…」
松本さんの後ろからひょっこりと出てきた、髪をお団子にしている幼い感じの女の子が、冬獅郎を見るなりしゃがみこんで現実逃避を始めた。
「すみません、隊長。雛森に伝えたら、こんなことに…」
松本さんが申し訳なさそうに眉を下げる。
冬獅郎は…頭痛でもしたのだろうか。
こめかみに手を当てて盛大に溜息を吐いた。
「玲、すまねぇが、部屋、もうちょい待ってくれるか…」
その言葉に覇気は無い。
なんだか、表情には疲労が濃く現れていた。
「うん、良いけど…「その必要は無い」
再び乱入者。
視線をずらすと、中性的な顔立ちの綺麗な男の人。