第1章 〜欠片〜
尸魂界の辺境を、二人の死神が駆けていた。
背に六と十と描かれた白い羽織をはためかせて。
「…ここまで来ても、霊圧なんて欠片も感じねぇぞ。ったく、本当なんだろうな」
体躯の小さな死神が、眉間に皺を寄せて呟く。
隣を駆ける中性的な男が、諌めるような視線を投げた。
「総隊長の指示だ。わざわざ反りの合わぬ隊長格同士を組ませるのだから、余程の事。愚痴は聞かぬ」
「…チッ…」
顔を顰めて舌打ちをする少年は、隣の男を視界に入れぬ様、更に足を速めた。
その時。
ドンッと腹に響くような音。
直後、目的地だった場所から、波紋の様に、凄まじい霊圧が溢れ出した。
「…っく…なんて霊圧だ…っ」
「…っ…成る程な…」
何とか自分達の霊圧を上げて持ち堪える二人。
しかし、尚も上がり続ける霊圧に、彼等の表情は硬い。
「急ぐぞ」
「分かってる」
まるで重力が何十倍にも膨れ上がったかのような、重苦しい空気を押し退けるようにして。
最大限まで霊圧を放出しながら、中心へと急ぐ。
このまま放っておけば、尸魂界全土にまで被害が及びかねない。
それ程の重圧だった。