第5章 〜遊戯〜
「で、何があったんだ」
耳朶を叩く冷静な声に、笑みが溢れて。
「ちょっとね、総隊長に喧嘩売っちゃった」
「…馬鹿か、お前は」
はぁっと吐かれる溜息が、耳を掠めて身を捩る。
けれど、冬獅郎は離してくれる気は無いらしい。
仕方ないのでそのまま話す。
「さっき冬獅郎言ったでしょ?私は他の人とは従うものが違う。だから、護廷隊に所属して、誰かの元に付く訳にもいかないし、何処かの隊の上にも立てない。
この世界が、私の行動に指示を出せば、私はこっちの指示を飲む事は出来ない。それを誰かの責任にしたくも無い。だから…」
「取引でもしたのか」
「軽く挑発して、私を捕まえられた隊に席を置くってね。刻限まで逃げ切れたら、無所属を認めてくれるって」
「唯の鬼事じゃねぇだろ」
「うん?斬魄刀でも鬼道でも何でも使って良いよって言ったよ。私も多少反撃するとも」
「…だから喧嘩売ったって事か」
やれやれと息を吐く彼は、多分瞳に呆れの色を浮かべているんだろう。
「まぁ、制限時間付きのゲームだよ。ちょっと楽しみだしね」
自信ありげに笑ってみせると、翡翠の瞳が厳しくなった。
「怪我すんなよ」
「うん。あ、そうだ。呼ばれた時、これを総隊長に渡してくれる?」
彼の腕から抜け出して、掌を上に向けると、そこに虹色の光が収束して、紫紺の小さな石が創造される。
「これは?」
「通信機だよ」
「成る程な。そう言えばお前、今の精霊廷内の情報は持ってるのか?」
彼の問いにくすりと笑みを零して。
「取得しようと思えば出来るかな」
暗に何時でも分かると伝えた。
多分これは総隊長に伝えるはずだから。