第1章 聖なる夜に(神田夢)
今日は、聖なる夜。クリスマス。
昨晩から降り続く雪は、止む気配がない。
シュリは、自室の窓から見える雪景色に浸っていた。
愛しい人の帰りを待ちながら。
「そんなに長い任務にはならねぇだろ。」
恋人の神田ユウがそう言って任務に出たのは、約1ヶ月前。
「嘘つき…何がそんなに長くはならない、よ。」
誰もいない部屋で、そんなことを呟く。
彼の性格上、クリスマスなんて行事を意識しないことは解っている。
別に、プレゼントが欲しいとか、何か特別なことをしてほしいとか、高望みはしていなかった。
ただ、一緒に過ごしてくれるだけで良かった。
任務は…仕事だ。
だから、神田のせいではない。
それでも、割り切れない自分にムシャクシャしてしまう。
談話室に行けば、誰かしらいるだろう。
束の間だが、この寂しさを埋めることも出来る。
だけど…そうではない。
神田だから、一緒に過ごしたいのだ。
聖なる夜も、あと数時間で終わってしまう。
シュリは小さく溜め息をついた。