第33章 番外編:恋病メランコリー【ep-02】
「僕の存在がどれだけあなたを傷つけただろう。あぁ、それこそが理想的だが。」
「――きゃああああああ!」
「――チィ!日向!」
やがて聞こえて来た悲鳴に、一気に慎也の頭が覚醒する。
完全なる失態だった。
任務を忘れかけていた自分に舌打ちをして玄関に行けば、そこには手を刃物で切られて血だらけで蹲る泉がいた。
「日向!大丈夫か?!誰がやった?」
「わ、わかんない――。開けたら突然ナイフで切られて――!」
恐怖でガタガタと震える泉の腕をネクタイで巻きながら慎也は近くにあったナイフを取る。
「このまま手を高く上げてろ!」
そう言って飛び出そうとする慎也の服を、泉はギュッと握った。
「日向?」
「――行かないで。」
消えそうなその声に、慎也はそっと泉の身体を抱き締めた。
「――日向。大丈夫だ。ここにいるから。――泉。」
名前で呼んでやれば泉は安心したようにそのまま慎也の腕の中で気を失う。
慎也は抱き上げてリビングに戻れば宜野座へ連絡する。
「――ギノ。悪い。俺のせいだ。日向が腕をやられた。」
『チッ!貴様、何をやってる!』
「悪い。後で説教は受ける。ナイフが落ちてた。指紋取れるかもしれねぇから鑑識ドローンを寄越せ。あと佐々山と征陸のとっつぁんも。」
『分かった。それで日向は?』
「今は落ち着いて寝てる。今日は俺の家に連れて帰るぞ。」
『は?!おい、狡噛!』
否定の言葉を聞く前に、慎也は電話を切った。