第24章 水に書いた約束
――本心を隠すのがお上手ね。
「もう恋なんてしないよ。一度だって、したことはないけどね。」
宜野座は泉達を連れて、航空機の墜落現場へと来ていた。
「――あれか。」
宜野座の言葉に泉は辺りを見回す。
「どうした、泉?」
訝しそうに慎也が問えば、泉はフルフルと頭を振った。
「そこを退け!」
『刑事課一係、宜野座監視官。該当スル情報適格性ハ有リマセン。立チ入リヲ禁ジマス。』
「何だと?!」
ドローンの言葉に、宜野座がカッとなる。
それを制したのは泉だった。
「伸元、待って。――私も?」
泉がドローンに問えば、ドローンが答える。
『刑事課一係、日向監視官。――特別捜査権限発令ヲ確認。立チ入リヲ許可シマス。』
「何?!」
宜野座が叫んだ瞬間に、丁度一台の車が到着する。
「説明は私がしよう。」
「――局長。」
「日向くんも来たまえ。」
現れた禾生を泉は訝しそうに見つめながらも頷いた。
「槙島聖護が逃亡に至った経緯をご説明願います。」
「厚生省内部から何らかの手引きがあった可能性が極めて高い。そうでもなければ逃亡など不可能だからね。真相は槙島自身の口から直に聞きだすしか他に無い。よって再度槙島の身柄を確保するに当たっては、その命を脅かさない事に最優先の配慮をして貰う。――改めて君達、一係に任せよう。」
「一体どう言う事なんですか?!納得の行く説明をして下さい!」
禾生の説明に納得が行かないとばかりに宜野座が噛み付く。
「――はぁ。宜野座くん。」
「はい?」
大袈裟にため息を吐いて見せた禾生に、宜野座は眉根を寄せる。
「縢執行官の逃亡を許したのみならず、その捜査すら行き詰まっている状況だ。そこに槙島再逮捕と言う優先事項が割り込んだ事で、君は自らの失態をうやむやにする絶好のチャンスを得たはずだ。これは一係への私なりの評価と助け船。その辺の親心を察して貰いたいものだね。」
その言葉に、泉は思わず笑った。