第21章 裁きの門
――それは、名前の無い怪物。
「恨みなんて御座いませんが、あなたが目障りだそうなので。」
「このタワー内で特に電力消費が激しいのは――、二箇所ですね。最上階付近と地下。」
ノナタワーに侵入したチェ・グソンは電力の行方を調べながら言う。
「――どっちが本命かな?」
「屋上近辺は電波塔ですからね。そりゃ大量の電力消費も当然ですよ。ところが下の施設はここからでさえ詳細が掴めない。」
「案内表示では地下4階までしか無い様だが?」
槙島の言葉に、チェ・グソンがニヤリと笑う。
「それがね。設計当初の図面だと地下20階まであるんですよ。コイツは胡散臭い。」
「――聖護さん。」
「ん?どうした?」
後ろで泉が名前を呼べば、優しい声音で振り返る。
「――こっちに公安局の車が向かってるわ。」
「きっと狡噛慎也だろう。驚かないよ。――二手に分かれよう。僕達は上。君は下だ。」
槙島は泉の手を取れば、チェ・グソンにそう告げる。
「良いんですか?この場合、本命は――。」
「狡噛は僕を狙って来るだろう。――泉がいれば尚更だ。なら陽動を引き受けるのが合理的だ。チェ・グソン。君の働きに期待しているよ。」
「――分かりました。お任せを。」
その言葉に、槙島の口角が上がる。
「さて。パーティもいよいよ大詰め、か。」
その頃、外には慎也達が到着していた。
「――当たりだ。槙島聖護。厚生省ノナタワーに何が目的だ?!」
中に押し入れば、既に侵入された形跡が残っていた。
「通報装置が遮断されています!」
朱の言葉に、慎也は通信を入れる。
「――おい、志恩!」
『そっちはどぉ?』
「これから修羅場だ。公安局からノナタワーの監視カメラをチェック出来るか?」
『?!厚生省は一応上位組織なのよぉ?!』
「出来ないのか?」
『裏口使って良いなら出来るけどぉ――。後で責任問題になったりしたらヤダなァ。』
志恩の言葉に、慎也は朱を見る。
「分かりました!責任は全て私が取ります!」
その発言で志恩は動き始めた。