第2章 成しうる者
――許せない気持ちに、蓋をした。
「だいきらい。震えた声で告げられる。俺も好きだよ。返事をしたら、彼女は笑った。」
「――良かったの?彼女と二人にして。」
「何よ。また見てたの?」
「仕方ないでしょ?見張ってないと怖いのよ、アンタんとこの上司が。」
「あぁ。伸元か。」
クスクスと笑いながら、泉は缶コーヒーを横に置く。
「差し入れ。代わりに煙草一本くれない?」
「慎也くんが嫌がるからって禁煙してなかった?」
「たまには良いじゃない。キスしなきゃバレないわ。」
「――悪い女ねぇ、アンタって。」
志恩は楽しそうに笑いながら一本煙草を渡してやる。
「――あら。何か楽しそうに話してるケド。ボリュームあげる?」
「趣味悪いわよ、志恩。」
「とか言いながらちゃっかり聞いてんじゃない。」
泉の態度に笑いながら、志恩はボリュームを上げる。
『――それと泉の態度を許してやってくれ。アレに悪気は無いんだ。俺が撃たれてカッとなったんだろう。』
『いえ――。日向監視官には後でちゃんとお詫びに行きます。』
「だって?健気ねぇ。」
「まるでこれじゃ私が悪者みたいじゃない?」
泉は苦笑しながら言えば、部屋を後にした。
「――つまりあの場における判断に間違いは無かったと。それが君の結論か?常守監視官。」
朱の報告書に目を通した宜野座が静かに問う。
「はい。彼女の犯罪係数上昇は一過性のものでした。事実、保護されたあとのセラピーも経過は良好でサイコパスは回復に向かっています。」
「――狡噛。何か言いたい事は?」
宜野座が問えば、慎也はそちらを一瞥して答える
「無い。常守監視官は義務を果たした。それだけだ。」
「そうか。――日向監視官は?」
書類をチェックしていた泉は、ふぅっとため息を吐く。
「狡噛執行官が何もないのなら私も無いわ。今回の件は不問に伏しても良いんじゃなくて?」
「――そうだな。」
宜野座は同意するように頷いた。