第1章 貸し借り無し R18
あれ?と自分の体に視線を移すと、肌が透けてしまうぐらいワイシャツが汗ばんでいた。
「あっははは!汗すごいね。緊張した?」
「えっ!あ、いや!ごめん!洗濯して返す!」
「いいよ、ここで洗ってくから、んのまえにシャワーしてったら?僕も頭洗いたいし。」
一緒に行こう。と手を引っ張られ監査のシャワー室に二人して飛び込んだ。
ジャバジャバと隣で何事もなかったようにシャワーを浴びるビーネ。
俺と奴を隔てる一枚の板の下からは、奴の白い足が見えている。
ペた、ぺた。と動く奴の足が妙にエロくて、先の部屋で襟元を緩めたり、初めてみた髪の毛をきちんとセットしていた奴の事を思い出し、心臓が高鳴った。
「緊張しただろ。」
ざぁあ。とシャワーの音の中に、ビーネの優しい声が混ざった。
「あ、あぁ。まぁ。」
「慣れないよな。ああいうのって。」
「そ、そうだな。」
いつもの仕事行儀な堅い声ではなくて、気を許した人にしか使わないような低い声色。
重なるように鳴り響く温かなシャワーの音が混ざり、形容しがたい妖艶な音になる。
先ほどまでの緊張と今の気が緩んだ状況とで、知らないうちに俺の息子が立っていた。
驚いて声が出そうになったが何とかこらえ、心を鎮めようと必死になる。
と、その時、バツン!と電気が落ちる音がして風呂場が停電した。
「え?!」
「あー、平気平気。ここの風呂場すぐ電気落ちるんだよ。暗くても平気?」
「あ、あぁ。」
良かった。これでもし覗かれてもばれないで済む。
お湯が冷たくなる事は無かったので、そのまま洗髪を続ける。
真っ暗闇の中、またビーネの声が聞こえてくる。
「ね、シャンプー貸して。」
「おう。」
ビーネの声が聞こえる度。
ビーネの動く音が聞こえる度。
顔にシャワーをかけているのか、息継ぎをする度。
反応してしまう。
まずい。今すぐ抜きたい。
動揺する手でシャンプーボトルを手に取り、下から差し出す。
「下から渡すぞ。」
いつもの声になるように。
「サンキュっうわっ!」
べしゃ!ゴン!とビーネの転ぶ音がした。
「ビーネ!」
その瞬間。俺は自分のが堅くなっている事を忘れ、ビーネのシャワー室に飛び込んで、彼の背中を起き上がらせようとしていた。
「ありがと……エド…お前?」
「ん。……はっ!」