第14章 真意
俺が物心ついた頃
父親と母親と昔から仲のいい客が屋敷にやってきた
名前はエレナ=デューレ
彼女は若く、とても綺麗で優しい瞳をしていた
シュウもレイジも粗相の無いようにと言われ、緊張した面持ちで迎えに出た
彼女は2人を見るなり温かい笑顔で微笑みかけた
こんな客人は初めて来たと思った
彼女は有名なバイオリニストでシュウも彼女に何度か演奏を聴かせてもらった
頭も良く、レイジにはいつも難しい本をプレゼントしていた
彼女は屋敷に来た時は大抵、母親のベアトリクスと雑談をしており
彼女は母の信用できる理解者で
きっと、ほかの婦人達の話や時期当主の事などを相談していたのだと思う
ほんの少しだけれど、彼女が来た後は少し母の雰囲気が軽くなった気がした
俺はあの人は月みたいだと思っていた
時折現れて心を満たしてくれる
しかし、ある時一つの知らせが届いた
彼女は夜崎家の当主と契を交わしたそうだ
彼女は子供も身ごもっているらしく
魔界は動揺した
何故なら、夜崎家の当主には正妻である第一夫人が既に居るからだ
それから一年して彼女は逆巻の屋敷を訪れた
久しぶりに会った彼女を見てシュウは驚いた
笑顔はいつもと変わらない
しかし、その目からは月の光ともいえる輝きは失われてしまっていた
そして、ふと後ろを見ると1人の少女が彼女の足に抱きついていた
彼女は母親そっくりで可愛いらしいドレスを着せられてまるで綺麗な人形のようだと思った
その子の名前は夜崎レナ....
レナの目はかつて見たエレナの美しい目を受け継いでいた
しかし、再び彼女に会うのはある事件が起こった後となる
それは、エレナ=デューレが自殺したというものだった
噂では彼女には元々婚約者が居たが、夜崎家当主が彼女に一目惚れし、彼女を凌辱したそうで、彼女は抵抗した末に死を選んだらしい
次にレナが屋敷に訪れた時に母として立っていたのはエレナでは無い夜崎家の正妻だった
彼女は記憶とその特別な血を封印されており、その事を語ることはしなかった
同時にこの時、シュウ達は彼女が許嫁である事を知らされた