第13章 切望
理由は思い出せないけど、私は今よりずっと幼い頃、ある屋敷を稀に訪れていた
そこは森の奥にあって....
その屋敷に着くと、扉の前にはいつも私より少し大きいお兄ちゃんが立っていて
私は彼を見るなり、彼に抱きついていた
彼は大きな手で優しく頭を撫でてくれた....
あぁ....
なんで忘れていたんだろう....
そうだ、今ならはっきりと思い出せる
彼の名は....
『ルキ』
いつも呼んでいてその名を聞くだけで安心していた
私の憧れの人で大好きな人
ふと横を見ると仲の良さげな彼のお父様と....
あれ?
長い茶色の髪に優しく微笑む顔....
彼女は....だれ?
『お母様!』
子供の私はその女の人をお母様と呼ぶ
え....どうして?
私のお母様はこの人じゃーーーーー
その女性はこちらを向く
その髪や顔立ちは鏡の中で見た私にそっくりだった
彼女の手が伸びる
ーーー貴方は前に進みなさい....レナ
闇の中聞こえた声は酷く懐かしいものだった