第12章 衝動
「それではカナト。下界の方は頼みましたよ」
玄関にはカナトとライトとレイジが居た
今日からまたカナトは下界に戻る
ここの混乱は魔界だけのものでは無い
下界に降りたヴァンパイアも同じように動揺を感じていた
きっと、ヴァンパイアの統率が弱まれば下界の人間にも被害が及ぶ
人間との共存を測る彼等にとってそれは避けたいことだ
それの統率にもやはり、1人の長が必要だ
「はい。やっと、静かな下界に戻れます」
カナトは門を潜ろうとする
「カナト」
家の中から声を掛けられ、彼は振り向く
「なんですか、アヤト」
先程まで誰もいなかった階段の前にはアヤトが立っていた
「どうしたのですか?」
妙に強ばった顔のアヤトにみんな違和感を感じる
「別に....ただ....
もし、何かあったら直ぐ言えよ」
「はぁ?」
いつもとは全く態度の違うアヤトにカナトは驚く
「どうしちゃったの?アヤトくん」
これにはライトもびっくりしている
「ちっ....別に何でもねぇよ」
アヤトはそっぽを向いて部屋の奥へと消えていく
「何なんですか?あれ」
カナトは不思議に思い
ため息をつきながら下界へ向かった
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「........」
レイジは何か考えを起こすように息を吸い込む
何故、父上は下界にある逆巻の屋敷の事をアヤトでは無くカナトに命じたのか....
これは....アヤトにも次期当主の可能性があるという事だろう
(はぁ....元から私には父上の椅子に座ることなど、叶わない願いだったのですね)
レイジは深いため息を落とす
ただ、気になることは....
あの手紙....夜崎祥匙の所へ行ってからアヤトの様子がおかしい
そして、シュウのレナへの態度も些か不可解だ
我々は多くを語ろうとはしない
お互い何かに感ずいていたとしても....
だから、私とシュウも....
レイジはガラス窓から外の赤い月を見る
(近頃の月はとても赤く....とても不吉だ....)
何かが起こる
そんな予感をレイジは受け取った