第10章 憎悪
ー夜崎家ー
「アヤト様。到着致しました」
執事が車の扉を開ける
「ん....」
車を降りて、まず目に付く大きな外観
この家はレナの実家であり、ヴァンパイア組織の最古層....
大きな夜会や会議はたいていここで行われる
そして、それを束ねるのが....
夜崎祥匙....
レナやレオの父であり、カールハインツの旧友....
そして、三つ子の叔父にあたる存在
満月の光を受けながら
アヤトは夜崎家を訪れる
彼はいつもの乱れた格好ではなく、夜会などで着るとても綺麗な服に身を包んでいた
胸には逆巻の紋章がついている
アヤトはこの呼び出しになんだか胸騒ぎを感じた
しかし、彼はここに来たーー
道を進んでゆくと、他のヴァンパイア達はアヤトを見るなり頭を下げる
アヤトはそれを見て、軽く舌打ちをして一つの扉を押し開ける
「よく来たな」
中から聞こえる低い威圧感のある声
扉の向こうには、指図め当主の座であるといわんばかりの広い空間が広がっている
アヤトは趣味が悪いと何度見ても思う
そして、その椅子に深く腰掛けるレナと同じ髪の色をした男が口を開く
「お前が素直に来るとは....」
祥匙はふっと笑う
「うっせ。随分、呑気じゃねーか。もうこの家もぼろぼろのくせに」
アヤトは挑発的な言葉を放つ
その態度にも祥匙は全く動じず....
「レオのことか?」
「!」
「確かに、昔からお前はレオによく懐いていたな」
息子が殺され、ラルク家に惨敗したというのに全く焦りを見せない祥匙にアヤトは段々イライラしてくる
「お前らはラルクには勝てなかったんだろ?だから、今度は俺達の力を使おうってか?」
「ふっ....ラルク家か....」
顔を抑え、微笑を浮かべる祥匙にアヤトは苦い顔をする
「この私が、ラルク家の狂った行為に一々関与すると思うか?」
「何言ってやがる....お前らは....」
「あぁ。敗北したよ、屈辱的なまでにね。
"レオ"は」
目の前の男は悪魔のように微笑む