第4章 出会い
涙が止まるまで、彼は何も聞かずその場に居てくれた
すると、側から1頭の馬が歩み寄ってくる
その男の人は馬を優しく撫でる
気持ちいいのか、馬はしっぽを振り彼に寄り添う
それを見ていると何だか微笑ましかった
「それで....お前はこれからどうするんだ?」
「ッ!!」
彼は振り返り、私の方を見る
「あ、あの....」
どうしようか....行く先なんてないし....
悩む私を見て、彼はまた溜め息をつく
「お前は、夜崎 レナ....だな?」
「!
え....なんで、私の名前....」
驚いた....
何故、初対面のはずの彼が私の名前を....
「ッ....その血の匂いを嗅げば、ただの貴族じゃない事は一目瞭然だ」
私は靴擦れした足を見る
そこからはまだ血が滲んでいた
しかし、何故だろうか
彼は一瞬....ほんの一瞬だけ悲しそうな顔をした....
「そのままこんな所に居ると、獣共に襲われるぞ」
よく周りを見渡すと、先程より霧が濃くなり辺りは確かに不気味だった
彼は馬にまたがり、こちらに近づく
「乗れ」
彼は手を差し出す
「え、でも....」
「ここで、このまま獣共に喰われるつもりか?」
「ッ!!」
彼の言葉に体をびくつかせる
「....手を取れ」
不思議だ....
何だか彼の手を取れば....何か分かりそうな
そんな気がした
私は彼の白い大きな手を掴む
「あの....ありがとうございます
名前....教えて頂けますか?」
私の言葉に彼は少しはっとする
まただ。彼はまたあの顔をする....
月夜に現れた王子様は"無神ルキ"と名乗った
夜崎 レナと無神ルキ
この出会いは偶然か....必然か....