第26章 分かち合い
「レナ...」
気配と匂いで分かったのだろうか、彼女は少し不安そうにコウの腕をひっぱる
「んー?どうしたのって...ルキくん!」
コウはアーチの向こうにいつもと違う雰囲気のルキが居ることに気づいた
レナに少し待つように声を掛け、ルキの方に駆け寄る
「ごめんね、ルキくん
レナちゃんが薔薇園に行きたいって言ったから」
ルキはいつも通りの冷静さを保っているようだが、コウには彼が心配と不安を抱えていることは簡単に分かった
「いや、すまない...」
そう言ってルキは彼女を見つめ続ける
その優しさの裏に隠れた悲しい表情に、コウはやり切れない思いになる
「ねぇ..ルキくん」
「?」
コウは少し話しにくそうに、ルキの顔色をうかがいながら声を出す
「レナが..今日、俺達に言ったんだ..」
コウ達がレナを探しに部屋へ入った後
彼女は縋るように、アズサの腕を掴み、震える声で彼女は言葉を発した
「『今の自分は...ルキの表情を見ることも、彼の苦しみを知ることも出来ない...
だから、もし私の知らないところでルキが悲しんでいるなら教えて欲しい...』って」
「っ...!! レナが...」
ふと以前も同じ事を言われたことを思い出す
「俺は何も答えることが出来なかったよ...
これは2人で分かち合って解決していくべきだと思うから」
コウは少し微笑んでルキの顔を見る
「分かち合う...か...」
彼女の想いがあの時と変わっていない事が分かり、ルキは驚いたように彼女を見る
そして、無意識のうちにルキはゆっくりと、彼女の居る薔薇園に足を進めた
「ふふっ」
その後ろ姿をコウは見送り
宝石のように輝く瞳で彼の心を見る
そして、納得したように目を閉じた
そう、何も変わってないんだよ
お互いを包む愛は、どんな事があっても消えてない
2人の心は繋がってるーーーーーー