第23章 罪
瀕死の状態であったルキはレナの血を飲み、意識を取り戻した
完全回復とまではいかないが、彼に流れるヴァンパイアの血が共鳴するように傷を癒していた
「これが....」
シュウは驚くようにレナを見る
これが、夜崎祥匙とエレナの間に生まれた力....
彼女の血の匂いはもはやレイジの薬では抑えきれず、全てを払い除けたように彼女に纏っていた
確かに、この力があればあの男の脅威になれるだろう
パチパチパチ....
乾いた拍手の音が庭に響き渡る
「流石は我娘....ヴァンパイアの力を最高に引き出すその血....
やはり、お前は特別だ」
「ッ....」
彼の瞳の奥底には私ではなく、もっと暗い闇が写っている
レナはゆっくりと立ち上がった
「お父様。貴方は自らこの一族の首を絞め、息子を殺し、全てをかき消そうとした
貴方にはもうこの家の王である資格はありません
長男であるレン御兄様にその座を譲り、罪を償うべきです」
夜崎レン
夜崎家長男であり、この国の騎士長を務めている
彼もまた祥匙の考えの上で戦争の真っ只中へ陣を進めている
祥匙にいわせれば、直ぐにでも始末はつく....そんな位置に立たされているのだろう
「私の計画が全て上手く行けば、王家はこの家になる」
「そんな事をしても、失う物のほうが多い....
それに、そこまでしてカールハインツ様を殺す理由が私には分かりません....
あの方は私に道を与えてくれました
逆巻は私のもう一つの居場所です....
私を支えてくれた皆を失う計画なら、私は絶対貴方には協力しません」
最初はまだ優しい父の存在を信じていた
しかし、ルキを傷つけ、逆巻を脅かす
そんな父をもう尊敬など出来ない
きっと、お母様も同じ様に失望したのだろう
レナの心にはもう恐れも迷いも無かった