第2章 御兄様
それから私はしばらく逆巻家で過ごすことになった
まぁ、今までも何度もこの家にはお世話になっていたため、いつもと何も変わらない....変わらないはずなのだが
なんだか、私の心の中には不安と恐怖でいっぱいだった
使い魔や執事達も屋敷に戻り、私の周りには夜崎の者は誰も居ない
こんな思いで此処に居るのは初めてだ
「レナ」
名前をよばれ、ハッとすると前にはレイジが立っていた
「どうしたの?」
するとレイジはため息をつく
「どうしたではありません。何度も声をかけたのですが....
そんなに家の事が心配ですか....?」
どうやら長い間ぼーっとしてしまっていたようだ
「うん....」
何で、戦争なんかが起こるんだろう....どうして....
もし、みんなが居なくなったら....
レナは目に涙を浮かべる
「........っ」
それを見て、レイジは何か言いたげな顔をするが、すぐ口を閉ざした
そして、さっとハンカチを手渡す
「夜崎はヴァンパイアでも力のある一族でしょう。
あなたは何も心配することはない....」
「レイジ....」
レイジは「勝ちますよ」と言って優しく微笑んだ
しかし、その彼の顔の裏には
憂いの表情が見えた気がした