第17章 舞踏
ルキはレナを強く抱きしめる
「....俺がお前を嫌うはずがない」
「っ....」
相変わらず彼の胸の中は温かくて心地いい....
けれど私の心はもうそれを素直に受け止められなくなっていた
レナはルキを見上げる
「...ルキくんの血を吸った時、昔の記憶が頭に流れてきたの....」
「!」
「その記憶には....間違いなくルキくんと私が居た....
....ルキくんは、過去の私を知ってるの?」
「ッ....」
ずっと避けていた
逆巻の皆にも、お父様にもこの事を聞くことが出来ない
知ってはいけない気がして....
でも、ルキくんの記憶を見て私の気持ちは変わった
私から目を逸らすルキくんの腕を掴む
「お願い。教えてルキくん....」
彼は眉間にしわをよせ、不満そうに顔をしかめる
「知らない方が良かった....そう後悔することになるぞ…?」
その言葉からは「言いたくない」そういう気持ちが伝わってきた
けれどこのまま見ないふりをすることも私には出来ない
「....私は、今までずっとお父様の成すままに生きてきた....けど、何だか幼い頃の自分を思い出そうとすると、どこか違和感を感じてた....
少し頭が痛くなって、何かに止められる気がして、だから途中で思い出す事を諦めた
けど....血から伝わってきた記憶の中のルキくんは....」
レナは彼の頬に手を当てる
「"泣いてた"」
「ッ....」
ルキは心をのぞかれたようで動揺する
「...ずっと....ずっと私の知らない記憶の中でルキくんが悲しんでいたんだとしたら....
私は真実を知りたいよ....」
涙を浮かべまっすぐ見つめてくる彼女の瞳は慈愛に満ちていた
あぁ....駄目だな
こいつの前だと、どうしても調子が狂う
彼女が悲しむと分かっていて昔話を持ち出すなんてつい先程までの俺なら考えられないだろうな
だが....
「わかった....全てを話そう」
ルキは軽く目を閉じる
「俺も....もうお前に全部を知っていてもらいたい....」
昔の記憶が消えたとしても、今の貴方には自分の事を見て欲しい
たとえ、それが目を塞ぎたくなるような事実だとしてもーーーーー