第1章 めりぃ・くりすます【うちはサスケ】
「サスケくん、今日は何の日でしょうか?」
「…………わからない」
「残念。今日は初めてキスをしてから一年記念日よ。サスケったら何にも覚えててくれないのね」
オレをジト目で見上げてくるのは、オレの恋人の夢美。
「……悪いな。覚えるの、苦手なんだ」
謝罪の意味も込めて夢美の柔らかな唇にキスを落とすと、彼女は「しかたないなぁ」と微笑んだ。
サスケくん、と呼んで来るとき夢美は大抵面倒な質問を振ってくる。
誕生日とか、付き合って一年記念日、とかならまだわかる。
けど初めて言葉を交わした記念日とか
手を繋いだ記念日とか
プレゼントをもらった記念日とか
訳がわからない。
世の中記念日だらけか。
こういう面倒な女が一番苦手だったはずなのに、夢美との付き合いは一年以上も続いている。
ぱっと見知的な美女なのに、子供っぽいとこがあって可愛らしくて
そうかと思えば任務では上忍として一切の隙を見せないところとか
それでなんとなく気になって親しくなっていったら、コロコロ変わる表情が見ていて飽きなくなって
…まぁつまりは、ギャップにやられてオレが先に惚れた。
記念日どうこうも面倒な行事ではあるが、キスひとつで機嫌を直して可愛く笑う夢美を見るのは好きだった。
結局、惚れたもん負けというやつだ。