第3章 ビターリキッド【忍足侑士】
顔をあげて声の人物を見ると、よく見慣れた眼鏡が見えて声を出した。
「忍足こそなにしてんの、こんなとこで?」
渡された携帯をポケットにしまい画面が割れてないか確認してポケットにしまう。
ポケットに手を入れたまま真っ直ぐと視線を合わせる。
大人びているとは思うが、まだ中学生。それもスポーツ選手がこんな所にいたらいけないだろうと思っていると、質問を質問で返すんやないのと言われた。
「まあええわ、俺はそこのコンビニに行くつもりやったん。」
指さされた先を視線で追うと、全国チェーンの知らない人はいない(と思う)コンビニエンスストアがあった。
「うちから一番近いの、ここしかないん。で、自分はどうなん?」
「じゃあ私もそこに用があった。」
「じゃあってなんやねんじゃあって」
「なんでもいいでしょ、んじゃ、携帯ありがとね。」
ひらりと手を振ると、その手が掴まれた。
「何?」
「あかんわ。」