第4章 せんこう、がんこう【前編】
「―――………赤葦」
「はい」
なるべく、赤葦の顔を見ないようにして、木兎は呟いた。
嫌われるぐらいなら、せめて自分の想いを告げてから嫌われよう。
トスを上げてくれなくなるかも知れない。
もう、主将と副主将の間柄で話すことなんて出来なくなるかもしれない。
いつもみたく、話しかけてダルそうだけどきちんと応じてくれる彼を、もう見れなくなるかも知れない。
だけど。
それ以上に俺は、赤葦が好きだ。
物凄く。好きだ。
「ちゃんと話す。部活終わったら部室残っててくれ」
「……はい」
心臓がバクバクするのを必死に抑え、その後の練習を必死にやることで、赤葦に対する自分の気持ちをごまかすしか今の木兎には出来ないでいた。