第1章 貴方って人は。
最近、少し調子が悪い。
自分の手のひらを見つめながら、赤葦京治は思った。
いつも通り、我らが大エース“木兎光太郎”に自主練に付き合わされ、半強制的にコートに連れ込まれる。「またですか」と言いながらも、もう慣れているからそのまま、エースのスパイク練習へと変わって行く。
「あかーし!いいトス寄越せよ!」
「はい」
両手の親指と人差し指で三角を作り、木兎が1番打ちやすいであろう山なりのトスを上げたとき。
いつもより、ボールに勢いが乗らなかった。
…あれ?
変な違和感はあったが、木兎は赤葦の上げたそのトスを綺麗にスパイクで捌いてみせる。
良かった…多分、気づかれてない…
心の中でふっと胸を撫で下ろした。自分が調子悪いと知れば、あの単細胞エースは何かしら質問攻めにしてくるに違いないから。
そうなると一番面倒臭いのだと、赤葦は知っている。