第5章 ☆徳川家康☆ ~やきもち~ /完結
―寒いな
部屋をでて澄んだ空気に触れ家康は思わず身を縮めた。
駿府に来てから頻繁に信長様の御前に軍義と称して綾と共に呼ばれる回数が多くなった。
ーふぅ
綾は信長様の好運をもたらす女なのだそうだ。
それにしても、回数が多い。
行けば名だたる武将らにそれはそれは可愛いがられ俺の牽制なんて肩透かしをくらってしまうほど…。
それでも、綾なりに皆に会えるのは楽しみにしていて人数分の羽織を拵えては手渡し喜ばれているようだ。
久しぶりに駿府に帰ってきたのに、いつまでたっても寝所に現れない綾を心配して部屋まで探しにきた。
遠くからでもぼぅっとした明かりが目に入りそこに愛しい人がいると安堵する。