第1章 ☆徳川家康☆ ~幸福な道~ /連載中
黙って聞いていた綾が何も言ってこないからどうしたのかと顔をむける。
綾は何も言わないのではなくただ不安そうに合わせていた手をぎゅっと握りしめて佇んでいた。
―声もだせないのか…?
綾があまりにも不安そうな顔をして俺を見つめてくるから…俺は…
引き寄せられるように近づき手を伸ばしてその柔らかそうな頬をなでる。
『綾はいつもみたいにへらへらしていればいいよ…』
掠れてでた自分の声にハッとして我に返る。
『と、とにかく明日 支度しときなよ』
自分でも動揺しているのがわかり、いつもの倍の速さで立ち去った。
―何だったんだ…今の