それでも私は生きていく 【PSYCHO-PASS】
第2章 人民の自由は国家の強さに比例する
「そう身構えないでくれ、いつもの話だ」
ニコリ、と笑う彼女は人間であり人間を辞めている
シビュラシステム……そう世間では呼ばれているが、私はあまり好きではなかった
「アンタ達に聞かれる事なんてロクなのないでしょ。さっさと済ませてよ、まだ報告書が山ほどあるんだから」
「君は相変わらず効率が悪いね…何故君が公安局にA判定を出されたのか我ながら疑問だな」
「まぁ貴方達も完璧じゃないものね、バグよバグ……いい加減話してくれない?時間がもったいないわ」
私のイライラした顔を見て心底楽しそう…いや、興味深そうに笑うその瞳の奥は全くと言っていい程、ヒトとしての感情がない
私はこの目が苦手だ。全てを見透かされているような気がするから
「では本題に入るとしようか…今朝のPsycho-Pass値は聞いたね?」
「相変わらず微妙な数値だったね」
「だがその目覚める数秒前に、またPsycho-Pass値が150以上を計測した」
「…また家族が殺される夢を見ただけ。もういい?大体嫌な任務の後はいつもある事じゃない。」
…そう、私があの夢を見るときはいつもPsycho-Pass値が極度に不安定になるのだ
それ以外にも、なんらかのキッカケで一般人以上に不安定になるが、目の前にいるこの国の神でも分からないらしい
本当の事を言えば、そういうレアケース用のサンプルが私なのだが
「やはり奏多琥珀、君は我々も未だ解明できていない点が多々ある。これからも働きに期待しているよ…それともう一つ」
「なんでしょう」
「君の所に配属される新人の件だが、彼女は中々の逸材でね……大事に育ててやってくれよ?」
「…貴方にとって都合のいい駒って事でしょ?それに私、学生時代から後輩に厳しいって評判だったのよ」
「ふふ…そうだったね、懐かしいよ。もう下がっていい、報告書ご苦労だった」
口ぶりからして今話していたのは私の学生時代を知っていたらしい…四六時中監視の目が光っているのも嫌なものだ
「失礼しました」
扉を閉めれば、無意識に安堵の溜息をもらしている自分に気づき、鼻で笑う
「…結局私も都合のいい駒じゃない」
捨て駒にならぬようにと生きる国民の一人にしかすぎない事を再認識させられるのだ