第3章 自由とは愚かなり。
『ねぇテト。どうして母上と父上は 急に私をパルス王国へ預けると言ったのかしら』
テトの背中にしがみつき 落ないように注意しながらも私はテトに話しかけた。テトは手馴れた様子で馬を操り森の中を歩いている。
馬とはこんなにも力持ちなのね。乗り心地もとても良いわ。
初めての乗馬に興奮しつつも私はテトの声に耳を傾けた。
「きっと 姫様に新しい世界を見せてさしあげたかったんですよ。それに パルス王国には姫様と同じ年の王子が居るとのことです。お友達が出来るよい機会ではありませんか」
『…そうね』
私は腰にある短剣に右手で触れ そして右手の薬指にはめられた指輪を見つめた。私がパルシマ王国を出発する少し前に母上と父上から頂いた代物。
その時に見せた両親の悲しげな笑みが頭から離れてくれない。どうしてあんな顔をしていたのかが 胸に引っかかる。
「…姫様 テトがおります」
『テト…』
「ご両親の代わりにはなれませんが 姫様のそばにはいつもテトがおります。ご安心下さいませ」
テトの声が 私の心を温かくさせる。
そうよね。どんな国であろうと どんな理由があろうと 私にはテトがいるわ!