第8章 華の決意
「ッ…苦しい」
「わりィ!」
サボはバッと離れた。
そんなに強く抱きしめたつもりはなかった。
知らないうちに腕に込める力が強くなっていた。
「俺、舞い上がってんだ今。」
「…。」
「まだ、飾り言葉だと思ってんのか?」
「…そんなことない。」
ラーラはサボを見つめた。
何故疑うのか・・・。
「私を…信じてない?」
「まさかっ!信じてるよ!!」
「そう…よね。」
弱々しく笑ってみせた。
今、この状況では心から笑うなんてこと不可能だ。
辺りはすでに夕暮れ。
太陽が地平線に沈み始めていた。
「お前こそ信じてないだろ。」
「まだ、と、言っただけよ。」
「いつになるか楽しみだッ!」
太陽がオレンジ色の光を放つ。
光が2人を染めた。
小刻みに震える琥珀の涙。
「いつになるかは…」
「お前次第。」
「ごめん…」
「言うな。謝ることねェっ!」
「うん。」
優しい光を放つあなたは太陽。
私はただの影よ。
完全に沈んだ太陽。
辺りは薄暗くなる。
「戻るか。」
「そうね。」
「腹減ったァ!!」
「食費があなただけで3分の1占めてるらしいわよ。」
「え゛」
「コアラが言ってたわ。」
他愛もない話に戻る。
いつもこうだったらいいのにという2人の願いは空に消える。
いつか来る別れ。
それは近くも遠い。
「ラーラちゃん!ここにいたの!?」
「コアラ!」
「おっと、俺を忘れんなよ?」
「何でサボ君が出てくるのよー。」
「こいつ、俺のモンだから。」
「えぇっ!?」
コアラはラーラに向き直った。
酷く驚いた眼差しを向けて。
「なっ、何でサボ君!!?」
「コアラ、お前俺を馬鹿にしてんだろ。」
「するよ!!」
「お前なァ!!」
「…。」
この2人の絡みをみるのはいつも笑えてくる。
”和み”があるのだろう。
「な、ラーラは俺がすきなんだもんな!」
「アハハッ…」
「笑われてるけど?」
「えっ!?今のは違うわ!好きよ。」
サボ君やらかしたな・・・。