第8章 華の決意
「自分を押し殺すなよ!」
「ッ!!離してよ!」
サボが振り向かないラーラを抱きしめた。
あまりの力強さに驚くもすぐに拒んだ。
「嫌よ!!私に触らないで…」
「じゃあ自分の気持ち理解しろよ!」
「うるさい!!放っておいてと言ったでしょう!!」
「放っておけねェって言ったんだ!」
サボは引かない。
ラーラの目は涙で潤んでいる。
それでも顔は怒りと悲しみに歪んでいた。
「お前の涙はまだ綺麗だ。」
「なッ…」
「汚してほしくない。」
「私はとっくに穢れているのよ!生まれた瞬間に存在を否定されるのよ!!?」
「俺は否定なんてしねェ!!」
ラーラは顔を手で覆って崩れ落ちた。
目の前にいるのは、自分を大切に思ってくれる人。
愛してくれる人。
「あぁぁぁ…」
「泣きたいだけ泣けばいい。今まで泣けなかった分全部泣け。」
「うっ…そんな……つもりじゃ…」
何でだろう。
言葉に促されて涙が止まらない。
「笑わないし、誰にも言わねェ。」
強気な優しさがどこかエースと似ていた。
どうしても重ねてしまう2人の姿。
容姿こそは似てないが、性格がどこか似ているのだ。
「エースっ…」
「ッ…。」
サボは目を瞑った。
ラーラが今も尚、エースを愛しているのかもしれない。
そんなときに自分の気持ちを抑えられなくなって、好きになった。
エースじゃなくて・・・俺を・・・。
「エースの…代わりは嫌だし、お前も代わりなんていないって思ってるだろう。けど俺はお前が好きだ。」
「…。」
「エースじゃなくて俺を見ろよ。」
「ッ……」
似ている。
やっぱりそっくり。
重ねてエースの代わりとしてサボは見れない。
でも感じる類似。
「エースじゃなくて俺を呼べ。困ったときは助けてやれる。」
「…サボ……。」
「俺はどこにも行かねェ。」
「…。」
「約束する。だからお前もどこにも行くな。」
「約束…。」
「絶対だ。」
温かいんだ。
同じ温もりがあるんだ。
そうか。
だから私は・・・。
「…よ。」
「ん?」
「約束できないよ。」
「不確かでいい。」
「守れる自信がないよ。」
「俺が約束もお前自身も守る。」
ずっと温かさで包んでいて・・・