第8章 華の決意
バルコニーに立って海を眺めるラーラ。
誰にも知られたくない3年前のできごと。
そして後悔。
「会いたいよ…」
その呟きは風へと消える。
自分でしたことなのに後悔している。
許せないだろう。
自分自身が許せなくて仕方ないんだ。
「…もう、忘れたいよ。」
あんな思い出全部消し去りたい。
ここでのことも、リオ一族のことも、エースのことも。
全て忘れてしまえたらどんなにいいか。
どんなに楽だろうか。
「分かってるんだ。」
自分は正しくなかったって。
でも正しいと捻じ曲げていた。
後悔を隠していたんだ。
本当なら立ち直れないくらい後悔しているはずなんだ。
「私は…可笑しいんだわ。」
「おい。」
「…何。」
サボが現れた。
ラーラは振り向かないで海を見続けた。
「こっち向けよ…。」
「嫌よ。」
「…お前……」
サボはあることに気づいた。
バルコニーのラーラの下の手すりに水滴がある。
「泣いてるのか?」
「うるさい!あっち行ってよ…」
「泣いてる女放っておけるワケないだろ!」
「飾り言葉はいらないよ!!!」
どうせ大切になんて思ってないくせに!
私の力を利用したいだけなんだわ!!
信じない!
もう、何も信じられないよ!
「飾ってなんかねェ。」
「嘘よ!私には綺麗に飾った言葉でしかないのよ!」
「じゃあよ、どうしたら信じてくれんだよ。」
どうしたら?
どうしたら・・・
私は信じるの?
愛されたら?
愛したら?
違う。
今現在サボを信用してないんじゃない。
信用してる。
じゃあなんで・・・
「分からない…もう、何もかも分からない。」
「お前はこの先どうしたいんだ?」
「死にた…」
「それ以外で。」
死ぬこと以外?
考えたこともなかった。
アーシャから翡翠の血を取り返して、シルラ宮殿に戻って・・・
そうしたらどうしたいんだろう。
もし、呪いのようなものが解けて生きたいと思ったら?
「仲間と一緒にいてくれよ。」
「仲間…」
「俺が守るなんてお前は怒るかもしれねェけど…一緒にいてほしいんだ。」
「ッ…!」
一緒にいてほしいなんて言われたのはひさしぶりだ。
エースにも言われた。
「…まだ、決められない。」