第6章 華の声
何か手立てを考えなくては。
それでも心の中ではまだここにいたいという意思が強くなる。
もう少しもう少しが重なれば、目的を失くしてしまう。
「どうしよう。」
月は非情にも煌々と輝く。
星よりも輝くせいで星が見えない。
月を見てると思い出す。
真っ赤に染め上げた気味の悪い赤月を。
まるで終焉を告げるかのように鈍い光を放っていた。
「思い出すだけで寒気がする…。」
リオ一族に手をかけて、全てのリオの人間を殺した後に突如雲間から現れた赤月。
そのときはラーラは恐怖で動けなくなった。
まるで月に操られているように。
今も尚美しい月。
だが時折変化してしまう。
恐ろしい輝きを放つ死の月に。
リオ一族の終わりを知っていたとでも言うような真っ赤な月。
「もう…やめよう。」
月は嫌い。
取り繕った表向きは美しい。
だが同時に恐ろしい。
ラーラは新月に星を眺めるのが好きだった。
小さくキラキラと光る星。
月や太陽のような光に負けじと煌いている。
ラーラは逃げていた。
関係のない天体の思考をめぐらせて考えるべきものから逃げている。
「考えるものは山ほどあるのよ。」
自分に言い聞かせる。
そして一度リセットするように目を瞑った。
「…どうやってここから出る?」
感情に任せて暴走してみる?
解放しろって主張する?
そんなことしても誰にも利益はない。
自分自身にも。
「じゃあどうしろってのよ。」
頭の中でグルグルと回想する。
そして一つの答えに行き着いてしまった。
もう二度としたくないことなのだというのに。
「記憶を消す…?」