第4章 華の言葉
「ねェ、私のこと知ってる?」
「えっ?」
「私がどれだけ危険視されてるか。」
「ま、待って。ラーラちゃん、どういうこと?」
どうやらコアラは何も知らないようだった。
ラーラはコアラを見つめた。
「私はね、リオ一族なの。」
「リオ…一族?」
知らないんだ。
リオ一族のことを・・・。
「何でもないわ。とにかく案内して。」
「そだね。」
「私の部屋は?」
「順番に案内するね。」
コアラについていくラーラ。
その手は琥珀の涙から離れていた。
少しずつ信用できるようになればいい。
「あ、ねェ。」
「何?」
「サボって何?」
「え、サボ君!?」
さっき聞きそびれたこと。
エースの兄弟だということは知れた。
だがそういうことを知りたいのではない。
ここでの地位や生まれ。
「サボ君ってさ、元貴族で昔海賊目指してたんだって。」
「じゃあ何故ここに?」
「幼少期に事故に遭ってずっと記憶喪失。だからなの。」
「海賊みたいな自由放棄なところはそういうこと。」
「あ、でも一応参謀総長だよ?」
「あれで?」
よく分からない。
基準からしてああいうのはそういう地位には向かないと思ってた。
しっかりと分別が出来て優先すべきものを感情を殺して選択できる人がなるものだと・・・。
じゃあ強さ?
「強いの?」
「そりゃあね。」
「ふーん。」
ラーラは琥珀の涙を見つめた。
これを手にしてから全ての見方が変わってしまった。
まるで呪われたとでもいうように。
琥珀の涙は双剣だった。
<翡翠の血>と呼ばれる剣があるはずなのだ。
だが、ラーラが琥珀の涙を見たときの翡翠の血はすでになかった。
そして翡翠の血を今誰が持っているかは知っている。
「アーシャ…」
「何か言った?」
「なんでもないわ。」
エリィアーノ・アーシャが双剣の片方をもっている。
翡翠の血を・・・。
ラーラはエリィアーノ・アーシャが嫌いだった。
ラーラが知らないことを何故か知っている。
何者かも定かではない。
会ったのは一度きりだ。
アーシャには殺されないと心に決めていた。
だが、会ったときに道連れに殺されるところだった。
そこをエースが助けてくれたのだった。
「いつか翡翠の血を取り返して故郷に戻るわ…。」