第13章 >>11 似た者同士な件
人に褒められたり認められたり、肯定される事なんて一つも無かったのに。
好きな事をして、貶されて、馬鹿にされて、真っ直ぐ見てくれる人なんて居なかったのに。
唯一逃げる様に縋った場所で、どれだけ1位になっても、どれだけ結果を残しても埋めれなかった心の穴に。
どうして、研磨...。
「っ...ぅっ......。」
『えっ...え...どうして泣いてるの?』
心に足りなかった物が満たされた時、僕は大粒の涙を流して人目など気にもとめず泣いた。
涙で霞む景色は、驚いてあたふたしている研磨の姿。
『僕、研磨と会えて良かった...。』
心がぽかぽかと暖かくなり、冷えきった感情に血が通うのがわかる。
「僕も、昔...自分に自信がなくて親にも友達にも...認められなかった。」
「そんな時、逃げた場所がここで...《いちご》さんの名前を見つけて...。」
「無意識にずっと追いかけてたんだ。」
すっと差し出される研磨の手。
『僕なんか…追いかけてもつまんないよ...。』
心からの笑顔が溢れる。
涙交じりの、本当に不細工な笑顔。
「追いかけた結果、今日友達になれた...でしょ?」
いたずらっぽい笑顔で返す研磨に、涙が止まらなかった。
『研磨、また遊ぼうね。』
振り上げた手を何度か左右に振ってお互いが見えなくなるまで何度も振り返り、とぼとぼと1人道を歩いた。
夕方になるとどんどん冷えてくる。
吐く息が、ほんわりと白く浮かび上がり、じわじわと消えていった。
「会えて良かったよ。本当に。」
そんな呟きがどこかでした気がした。