第2章 >>1 噂話は流れる件
『キチィまじ殺す。…でたー、とりあえず殺すって言う奴ー。書き込んだ奴どんな奴だろう。』
カチカチとマウスを忙しなく動かして、相手のIPアドレスを抜き取る。
どんな顔してこんな事書き込んでるんだろう。
どんな人物なんだろう。
これをしている時間が最高に興奮する。
『うっわ…42歳で、コンビニアルバイト……リアルだねー。』
職場や住所、名前や年齢、どんな人生を歩んでどこで挫折したのか。
全部全部、自分が把握している事実に快感が背筋を這う。
煙草に火を着けて缶ビールを空ける。
今日もいっぱい荒らして、いっぱい調べて、僕が僕である為の自己肯定をする。
でも、何処かで既にはじまっていたのだ。
この時は何も解らないままだったが、きっと僕は、徐々に何か見えない大きな色に染められる運命だったのかもしれない。