第6章 >>5 地獄の沙汰も金次第な件
同時刻。
雑居ビルの一角。
寂れたポスターが雑に貼られた階段を上り、煙草の吸殻が捨てられた廊下を歩いて一番奥。
こじんまりと、控えめに飾られたプレートには《No.1》の文字。
これまたガムで汚されたドアを開けると、そこはまるで別世界。
外側は偽物、その内側は高級ホテルの様にアンティークが施され、シックなデザインの大人の落ち着きが漂う空間。
受付にはこれまた高そうなスーツを着た男性。
外とはまるで比べ物にならない位、確立された空間。
「ぎゃああああああああ!」
そこに似つかわしくない、女の断末魔。
「いやー…返せないってのは無いんじゃない??」
天童覚。
彼は優しい笑顔を女に向けた。
その笑顔の横で、綺麗なネイルが施された小指がちらつく。
「こんな事に金かけるならさあ…。」
女の手を取り、床に押し付けナイフを親指に当てると、一気に力を込めた。
「返せるっしょ?!フツー!!」
飛び出す血に、再び響く断末魔。
意識を失った女を確認すると、切り落とした2本の指を床に放り投げた。
「工、それ片付けといてー。」
「えっ…ええー…。」
俺は次も残ってるの!
そう言いながら奥に続くドアへと消えていく。
五色工は血と排尿の臭いに耐えながら、いそいそとその場を片付けて深いため息を吐いた。
「で。お金の件なんだけどー。」
別室にはまた違う債務者が居た。
小太りの中年男性。
何日も風呂に入ってないのか、酷い悪臭、そして脂ぎった髪。
薄汚れた眼鏡の奥で、恐怖に揺れる目が見える。
「すみませんっ!必ず明日にはお返ししますので…お返ししますので!」
「いつまでたっても返さないからー、川西から俺に担当変わったんだろうが。」
椅子に縛り付けられた男を横目に、ゴミ箱から空のペットボトルを取り出しキャップを外す。