第21章 ~恋ネコ①~ 真っ直ぐプロポーズ
…というわけで、
今日から一週間の出張。
行きたくな~い。
『ね、アキちゃんも行こうよ。
昼間は、観光してたらいいじゃん。』
『だねぇ。私が休みなら、
すーぐついて行くんやけどねぇ(笑)
ね、リエーフ、忘れ物、ない?』
『ない…あ、ある!アキちゃんのキス!』
『はーい。』
chu❤とキスをしてくれる。
『いってらっしゃい、気を付けて。』
その声を背中に、出発。
なかなか来ないエレベーターは
これからの出張の日々の長さを
表すようで。
…うう…一週間…長いよっ…
ポケットに手を入れようとして
なんとなく、いつもと違う…と思ったら、
あぁっ、
今日は移動だけだから
いつもと違うジャケット着てたんだ!
ということは、社章忘れてる!
ガラガラガラ、とトランクを引きずって
Go Back。
『アキちゃん、社章忘れた!
いつものジャケットの左胸についてる!』
部屋の奥から聞こえるアキちゃんの声。
社章?…あ、あったあった。
パタパタと足音が近づいてきて、
"これ?"と、手渡してくれる。
『そうそう、忘れるとこだった!』
俺が焦ってて
つけるのに手間取ってると
『つけよか?』
と、手伝ってくれた。
近づく顔に欲情しそうになった時、
『はい、これでヨシ。』
アキちゃんがポン、と
胸を一叩きしてくれる。
『行く前に気付いてよかったねぇ。
いってらっしゃい!』
頬にキス。
えへ、帰って来てよかった、
なーんつって。
玄関ドアを出た途端、
『あぁっ、リエーフ、待って!』
ん?ドアを開けると、
俺を追いかけようとしたのか
サンダルを履きかけたアキちゃんが
俺の胸にゴツンとぶつかる。
『イタタタ…リエーフ、これ!』
さっき、社章をつける時に
靴箱の上においた封筒。
…ヤベ。これ忘れたら大変だった。
『アキちゃん、助かった!』
ギューして、
今度は俺からchu❤
『…今度こそ、いってらっしゃい。』
『行きたくないけど、行ってきます!』
さすがに、もう、行かなくちゃな。
玄関を出てエレベーターにのり、
時間を見ようと腕時計を、
腕時計を…あれ?腕時計、ない!
えと、スマホ…
うぇ~い、
時計もスマホも忘れてるぅ(泣)
もうっっ!行きたくなさすぎだろ!