第20章 未来への扉
式はチャペルでのキリスト教式でした。
夏希ちゃんは、
憧れだったというプリンセスラインの
ウェディングドレスに身を包み、
お母様にベールダウンをしてもらって
お父様とバージンロードを歩き、
初恋の人 夜久君と、
…あの照れ屋の夜久君と、ですよ。
誓いのキスを交わしました。
打ち合わせの最初のうちは、
『手を繋ぐのも恥ずかしいのに、
人前でキスなんか出来るかっ!
職場のヤツらも見てんのにっ!』
…と、頑なにキスを拒んでいた
夜久君でしたが、
それでも、夏希が望むなら、と
頬にCHU❤と、短くキス。
なんだかんだ言いながら、
やっぱりキメるところはキメるあたり、
さすが、誠実さと愛情深さが伝わります。
…夏希ちゃんのこと、
本当に本当に、大好きなんだね。
そしていよいよ、
10ヶ月かけて準備してきた披露宴へ。
既に会場内にはゲストも入り、
あとはお二人の入場を待つばかりです。
披露宴の一着目は、
あの、二人が出会った時のショーで
夏希ちゃんが着たブルーのドレス。
花嫁の幸せのアイテムのひとつ、
"something blue"にもぴったりで。
二人が
扉の前にスタンバイしたのにあわせて、
会場内では
オープニングビデオの上映が始まりました。
『うわ、緊張してきた…』
『夏希ちゃん、これはね、
夜久君と夏希ちゃんの未来に繋がるドアなの。
この向こう側の人達はみんな、二人の味方。』
"VTR、残り1分です。"
耳元に、会場内からの指示が届きます。
『さ、笑顔で。
夜久君、夏希ちゃんを頼むよ!』
『わかってる。…夏希、ほら。』
夜久君が差し出した腕に
手をかける夏希ちゃん。
『おめでとう。
その手…いつまでも離さないでね。』
二人が笑ってうなずきます。
『早瀬…ありがとな。』
『(笑)まだ、これから!』
"ドアオープン、10秒前です。"
さぁ、私の、今日一番の大仕事。
未来へ繋がる扉の向こうへ
二人を送り出す瞬間。
"3、2、1、オープン"
『いってらっしゃい!』
背中を押します。
…心からの
"おめでとう"の気持ちを込めて。
二人の背中は
光と拍手の中に吸い込まれていき、
披露宴は、無事、始まりました。