第20章 未来への扉
タキシードとウェディングドレスに
着替えた二人。
そろそろ控え室を出る時間がきました
いよいよチャペルに移動です。
私は、撮影スタッフに目配せで合図。
写真班も動画班も、準備、OK?
どちらのスタッフからも
目配せで"OK"の合図が。
よし、では。
『そろそろチャペルに行きましょうか。』
立ち上がった二人。
先に靴を履いた夜久君が、
控え室のドアを開けて出ていこうとします。
『ちょっと待って!夜久君、手、出して。』
『手?』
ほい、と左手を出す夜久君。
私は、二人の間に立ち、
夏希ちゃんの右手を
夜久君の左手に重ねました。
『え?まだ手、繋がなくていいんじゃね?』
『ダーメ。
今日は夜久君はエスコートが仕事!
他は何にもしなくていいから、
夏希ちゃんと手を繋いでて下さい!』
…夏希ちゃんの小さな願いは
"夜久君と、手を繋いで歩きたい"
チャペルや会場内では
もちろん腕を組みます。
でも、そうじゃない時間も。
明日からは
"普通の毎日"の積み重ねだからこそ
今日だけは
"夢を叶える"1日に。
夏希ちゃんの願いだと気付いたのでしょう。
『しょーがねーな、今日は特別だから!』
あの照れ屋の夜久君が
夏希ちゃんの手をギュッと握りしめて
一歩前を歩き始めると、
ついていく夏希ちゃんが
本当に嬉しそうに
私に笑顔を向けてくれました。
あぁ、幸せだね…よかった。
なんだろ。
私まで手のひらが熱くなるような
幸せな気持ちになってしまいます。
二人が手を繋いだ瞬間は、
写真でも動画でもちゃーんと撮影済み。
"今のこの気持ち、
ずーっと忘れないでね"
そんな、私からのお祝いの気持ちを込めて。
それぞれの思いを込めた1日、
いよいよ、始まります。