第20章 未来への扉
翌日、クロにお礼の電話をした。
『クロ、昨日はありがとう。仲直りしたよ。』
『あ、そー?そりゃ、よかったじゃん。』
『でさ、言いにくいんだけど…
お礼にワインとか買ったのに、
途中でつい、夏希と開けちまいました…』
『なんだそりゃ(笑)子供かっ?!』
『ほんと、ごめん。
気を遣ってもらったのに
手ぶらで帰って来てしまって…』
『そんなん、かまわねーよ。』
電話の向こうで、クロがゲラゲラ笑ってる。
『几帳面な夜っ久んが土産に手を出すなんて、
よっぽど楽しかったんだろ?
作戦成功ってだけで、主将としては嬉しいぜ。』
『…クロ、』
『あ?』
『クロのアドバイス通り
少し距離を置こうかと思ったけど、
夏希が寂しいっていうから、
今まで通りの付き合いでいくことにした。』
『なにかと思えば突然、ノロケか(笑)
どーぞどーぞ、ご自由に。』
『…俺がまた
嫉妬とかで暴走しそうになったら、
そん時は、クロ、頼む。』
『知るか、んなこと(笑)
言っただろ、俺は夫婦喧嘩には興味ねーから。』
『俺、知ってっし。
そんなこと言ってても、
クロはいざという時に
チームメートを放っておくような
主将じゃねーもん。』
『ばーか。
俺も、自分の恋愛で手一杯なんデス。
人の世話、してる場合じゃないんデス。』
『恋愛マスターが、よく言うよ。
クロが結婚するときに、
俺が恩返しさせてもらうから!』
『アハハ、そん時は、頼むわ。
世界一、キレイにしてやって、
サプライズもいっぱいしてさ、
泣かせてやろーっと。』
『クロと付き合う女は、幸せだな。』
『夏希こそ、
夜っ久んにこんなに愛されて幸せだろーよ。
…結局、最後に選んでもらえるのは
一人だけだからな。
ま、ケンカしながら仲良くやれよ。』
じゃあな、またな、
…と声をかけあって
通話は終わる。
"ちょっと距離を置け"という
クロのアドバイスではなく、
『今まで通りでいく。』と宣言した。
言いたいことは、ちゃんと言う。
少しでも、毎日、連絡をとる。
会えるときは、少しでも会う。
それが、俺達が選んだやり方。
もう、大丈夫だ…と思う。
夏希も、
結婚したいって言ってくれたし。